倒産処理手続
2025年12月12日
倒産処理手続の知識は、税理士試験においても問われています。 令和3(2021)年度法人税法の計算問題では、貸倒れに関する資料の中に、破産法による破産手続開始の申立て、民事再生法による再生手続開始の申立て、再生計画認可の決定が登場します。 また、令和元(2019)年度所得税法の理論問題では、債務免除を受けた個人の所得税の取扱いとして、破産法による免責許可の決定または民事再生法による再生計画認可の決定があった場合についての解答が求められています。 本節では、倒産処理手続(破産手続、民事再生手続、会社更生手続及び特別清算手続)の概要などについて解説します。 1 倒産処理手続 倒産とは、債務を返済できないような経済的状態をいいます。 倒産状態を放置すると、早い者勝ちの債権回収が行われ、債権者間に不平等が生じるおそれがあります。また、再生が可能であり、債務者にとっても再生のほうが債権回収額の点からメリットがあるにもかかわらず、債務者が破産に追い込まれ、経済活動・事業の再生による利益を実現できなくなるとおそれがあります(囚人のジレンマ)。さらには、低い清算価値しか実現できないおそれがあります。 そこで、倒産状態を放置しないことが債権者・債務者の双方の利益に適合するため、倒産処理手続が定められています。倒産処理手続においては、債権者による個別的な権利実行が禁止されます(担保権の実行を除く)。 倒産処理手続とは、債務者の財産を換価して債権者に平等に配当する清算型と、債務者の事業などを債権カットや弁済の猶予を与えることにより再建する 再建された事業などから生じる収入から弁済する再建型があります。 また、債務者が自己の財産などの管理処分権などを喪失し、選任された第三者(例、管財人)が管理などを行う管理型と、債務者自身が管理処分権を保持し手続遂行主体となるDIP (debtor-in-possession) 型があります。 倒産処理手続 | | 管理型 | DIP型 | | :--- | :--- | :--- | | 清算型 | 破産手続(破産法) | 特別清算手続(会社法) | | 再建型 | 会社更生手続(会社更生法) | 民事再生手続(民事再生法) | 2 破産手続 (1) 破産手続の概要 破産手続は、清算型かつ管理型の倒産手続です。裁判所から選任され、債権者を代表する第三者機関である破産管財人が、債務者の財産を換価し、また負債を確定させたうえで、債権者に対して厳格な債権者平等の原則に則って換価代金から配当します。 破産手続の対象となる債務者は、個人(自然人)と法人です。法人破産は、債権者のための手続であるのに対して、個人破産は、債権者に配当させるためであることは少なく、債務者が免責を得ることを主目的として行われるため、債務者のための手続であるといえます。 債務者自身による破産手続開始の申立てを「自己破産申立て」といいます。令和2(2020)年度の申立件数は、個人7万8188件(うち自己破産7万1078件)、法人の約266件(うち自己破産885件)となっており(司法統計)、ほとんどが自己破産申立てです。 裁判所は、債務者が支払不能にあるときは、破産手続開始の決定をします(破産法15条1項)。開始決定と同時に、裁判所は、破産管財人(ほとんどが弁護士)を選任します(破産法31条1項、74条1項)。また、開始決定をしたときは、官報公告を行います(破産法32条1項、10条1項、本節のCOLUMN)。 破産手続の場合は、他の倒産処理手続(再生計画、更生計画、協定)とは異なり、債務者の多数決により債権者の権利の内容を変更することは認められていません。破産管財人は、破産財産の価値に応じて平等に配当を行わなければなりません(破産法193条、194条)。 そして、裁判所は、債権者への配当が終了した後、債権者集会が終結したときは、破産手続終結の決定をします。終結決定をしたときは官報公告を行います(破産法220条)。 (2) 倒産処理手続 債務者が個人の場合、支払不能だけでなく債務超過も破産手続開始の原因となります(破産法15条1項)。 破産手続開始の決定には、株式会社の解散事由となります(会社法471条5号)。解散後も、債務者である法人は、破産手続による清算の目的の範囲内において存続しますが、破産手続が終結し、残余財産(自由財産)がないときは消滅します(破産法35条)。 (3) 個人破産 ア 同時破産廃止 破産者に破産手続費用を支払うだけの財産がない場合には、裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をします(破産法216条1項)。同時破産廃止は、破産管財人の選任も行われません。 同時破産廃止は(法人破産者もありますが)個人破産に多いです。 イ 自由財産 債権者への配当に充てられず、破産者が手元に残すことができる財産を「自由財産」といいます。破産手続開始後に破産者が取得した財産(破産法34条1項・2項、例、手続開始後の労働の対価としての給与)や差押禁止財産(同条3項1号)、差押禁止財産の拡張(同条3項2号)などが自由財産となります。自由財産の拡張が認められることもあります(同条4項)。例えば、預金(債権)は金銭ではないので、原則として差押ができますが自由財産の拡張が認められれば、差押えされずにすみます。自由財産の拡張が99万円以下となる自由財産の範囲の拡張は、比較的緩やかに認められます。 なお、法人にも自由財産は認められますが、極めて例外的な場合に限られます。 ウ 免責手続 債務者が個人の場合、破産手続とは別の手続として、免責手続があります。自己破産手続開始の申立てがあった場合には、同時に免責許可の申立てをしたものとみなされます(破産法248条4項)。 裁判所は、免責不許可事由(例、浪費・賭博による著しい財産の減少)がない限り、免責許可の決定をします(破産法252条1項)。もっとも、免責不許可事由があっても、裁判所の裁量によって免責許可の決定をすることができます(同条2項)。 免責許可の決定が確定すると、個人破産者は、原則として、破産債権について責任を免れます(破産法253条1項)。ただし、一部の非免責債権(例、租税、破産者が悪意または重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権、養育費債権)には、免責の効力は及びません(同条1項但書)。重んじるべき利益を考慮した上で、免責許可制度の趣旨との調整から特定の債権は非免責債権とされています。 エ 破産管財人 破産手続では、破産手続開始の決定により、様々な権限についての資格が制限されます。例えば、税理士法24条には、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は、税理士となる資格を有しないと規定されています。 免責許可の決定が確定すると、破産者は復権し(破産法255条、その他に256条)、資格制限も消滅します。 3 民事再生手続 (1) 通常再生 ア 概要 民事再生手続は、再建型かつDIP型の倒産手続です。債務者は、手続開始後も、原則として業務遂行権及び財産の管理処分権を有しますが、債権者に対して、公平かつ誠実に、権利を行使し、再生手続を遂行する義務を負います(民再38条)。 通常再生手続の対象となる債務者は、個人と法人です。 令和2(2020)年度の既済事件数は、通常再生は152件です。なお、下記(2)で解説する小規模個人再生は1万1948件、給与所得者等再生は764件となっていました(司法統計)。 最近では、エアバックの不具合が問題となったタカタ株式会社が民事再生手続を選択し、平成30(2018)年6月に再生計画の認可決定が確定しています。 また、令和3(2021)年10月末時点で、管財人を選任せずに再建を進めている(株)MTGOX)や学校法人森友学園などが民事再生手続中です。 イ 再生手続開始の原因 再生手続開始の原因は、債務者に破産手続開始の原因となる事実(本節の2(1))の生ずるおそれがあること、または債務者が事業の継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済することができないことです(民再21条1項)。両者は、「おそれ」があれば足りることとすることで、開始原因を緩和し、再生が可能な早期の申立てを促しています。 裁判所は、申立てがあり、再生手続開始の原因があるときは、再生手続開始の決定をします(民再33条1項)。 ウ 監督委員 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、監督委員による監督を命ずる処分をすることができます(民再54条1項)。監督委員は(ほとんどが弁護士)、再生債務者(債務者)の行為に対する調査権と同意権(同条2項)、今後の再生計画案に関する調査権(民再58条)などを有します。 エ 再生計画案の決議 債務者は、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければなりません(民再163条1項)。再生計画には、再生債権者の権利を変更する条項(例、元本を6割免除し、残元本を8年間で弁済する)などを定めなければなりません(民再154条1項)。権利変更の内容は、再生債務者が自力で返済できる見込みのある内容でなければ、再生計画案は可決されません。 裁判所は、再生計画案の提出があったときは、一定の場合を除き、決議に付する旨の決定をします(民再169条1項)。 再生計画案の可決のためには、①出席議決権者の過半数の同意(頭数要件)及び②議決権者の議決権総額の1/2以上の議決権を有する者の同意(債権額要件)が必要です(民再172条の3)。 オ 再生計画認可の決定 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、不認可事由がある場合を除き、再生計画認可の決定をします(民再174条)。 不認可事由とは、決議に同意しなかった多数の再生債権者を保護するための最低限の要件を満たさないことです。具体的には、民事再生手続よりも破産手続によるほうが債権者にとって有利で、債権者の一般の利益に反することなどです。 再生計画は、認可の決定により、効力を生じます(民再176条)。認可決定が確定したときは、再生計画の定めなどによって認められた権利を除き、債務者は、原則としてすべての再生債権について免責されます(民再178条)。 再生債権(届出再生債権及び認識債権(届出がなくても債務者がその存在を知って認否書に記載した再生債権))の内容は、再生計画の定めによって変更されます(民再181条)。 カ 手続続行の決定 裁判所は、監督委員が選任されている場合において、再生計画が遂行され、または再生計画認可の決定の確定した日から3年を経過したときは、再生手続終結の決定をしなければなりません(民再188条2項)。再生計画認可の決定時に終結決定がなされないのは、再生計画の履行を監督するためです。 (2) 携帯再生 ア 小規模個人再生 小規模個人再生とは、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある個人債務者を対象として、通常再生よりも簡易迅速に処理する手続です。 小規模個人再生の手続開始要件は、①債務者が将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること、②再生債権総額(ただし、住宅ローンなどを除く)が5000万円を超えないことです(民再221条1項)。③は、将来の収入から弁済することになり、破産手続よりも多くの弁済ができるので、簡易な再生手続を利用できることにしたものです。収入が定期的でなくても、また収入額の変動幅が大きくても、①の要件を満たします。④において住宅ローン債権額などが除かれるのは、それらは再生債権による減免の対象にはならないからです。 再生計画には、通常再生とは異なり、権利変更の内容について形式的平等の原則が適用されます(民再229条1項)。 裁判所は、再生計画の提出があったときは、一定の場合を除き、決議に付する旨の決定をします(民再230条3項)。 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、不認可事由がある場合を除き、認可の決定をします(民再231条1項)。不認可事由として重要なのは、最低弁済額に反することです(同条2項5号・4号)。将来にわたる弁済をする再生計画では、社会的な感情などから相当ではない、最低弁済額を下回るべきでないとの要請もあるため、最低弁済額を上回る弁済をしなければなりません。 小規模個人再生手続は、再生計画の認可決定によって当然に終結します(民再233条)。履行の監督は想定されていません。 イ 給与所得者等再生 給与所得者等再生とは、小規模個人再生の対象となる個人債務者のうち、定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、収入額の変動幅が小さいと見込まれる者を対象として(民再239条1項)、小規模個人再生よりもさらに簡易迅速に処理する手続です。 可処分所得の一定部分を計画弁済に充てることが必要となりますが(民再241条2項7号)、再生計画案に対する再生債権者の決議(同意)は必要とされません。申立の段階から弁済する意思が乏しい、給与所得者等再生では、小規模個人再生が選択されることが多いです。 ウ 住宅資金貸付債権に関する特則 経済的に困窮した個人債務者が自宅を手放すことなく再生できるよう、住宅資金貸付債権に関する特則が設けられており、他の再生債権者とは異なる取扱いを定めることができます。 この特則は、通常再生(個人)、小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれにおいても適用されます。 4 会社更生手続 会社更生手続は、再建型の倒産処理手続です。株式会社のみを対象とした(会更1条)、民事再生手続よりも複雑な手続ですが、更生管財人が必ず選任されます(会更42条1項)。 に対して提供できてしまうこと(個人情報保護法23条)が懸念されました。 そこで、令和2(2020)年6月に個人情報保護法が改正され、「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない」(16条の2)という規定が設けられました。 個人情報の不適切な取得だけでなく、不適正な利用も禁止されることとなりました。令和4(2022)年4月に施行されます。 POINT 1 (法的な)倒産処理手続として、破産手続、民事再生手続、会社更生手続及び特別清算手続がある。 倒産処理手続には、清算型と再建型がある。また、管理型とDIP型がある。